令和4年度(2022)構造一級試験解説【法適合確認No.2】

令和4年度の構造設計一級建築士試験・法適合確認の第2問は、「建築基準法および建築士法における構造関係規定の位置づけ」 に関する出題でした。

一見すると条文知識を問う単純な問題に思えますが、実際には「構造計算適合性判定」や「構造設計一級建築士の関与」など、実務でも頻繁に出てくるテーマが含まれています。
特に、設計の初期段階で「この建物は適判対象か?構造一級の 関与が必要か?」を正しく判断できるかどうかは、確認申請のスケジュールやプロジェクト全体の進行に直結するため、試験勉強と実務を結びつけて理解することが重要です。

この記事では、問題文と解答を振り返りながら、さらに「実務での判断ポイント」にも触れて解説していきます。

問題

建築基準法及び建築士法における構造関係規定の位置づけに関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。

1.既存不適格建築物の所有者・管理者などには、その建築物を常時適法な状態に維持するための努力義務が課せられている。
2.構造計算適合性判定の要否及び構造設計一級建築士の関与の要否は、共に構造設計で採用した構造計算方法により決定される。
3.「一の建築物」として扱われる場合であっても、エキスパンションジョイントにより構造力学的に独立したものと判断される場合については、それぞれの部分を別の建築物とみなし、構造計算などの構造関係規定への適合を判断する。
4.耐久性等関係規定は、構造計算の有無や方法にかかわらず適用される。

解答

不適当なのは「2」

構造一級建築士の関与は建築物の規模によるため、「共に構造設計で採用した構造計算方法に決定される」は誤り。

解説

選択肢1

建築基準法第8条第1項に規定。
既存不適格建築物であっても、所有者・管理者には「常時適法な状態に維持する努力義務」があります。
正しい記述

選択肢2

下記のポイントにより、不適当

  • 構造計算適合性判定の要否
    → 建築物の計算方法によって決まる
  • 構造設計一級建築士の関与の要否
    → 建築物の規模で決まる

構造計算適合性判定が必要な建築物

建築基準法第20条第1項二号・三号 に該当する建物のうち、一定規模を超えるものが対象になります。

  • 法20条第1項二号イ
    → ルート2・ルート3・限界耐力計算など、許容応力度等計算以外の方法による建物
  • 法20条第1項三号ロ
    → 国交大臣が認めたプログラムを用いて計算した場合(いわゆる「プログラム計算」)

構造設計一級建築士の関与が必要な建築物

こちらは 建築基準法第20条第1項一号・二号 に規定されています。

  • 法20条第1項一号
    → 高さ60m超の建築物(大臣認定が必須となる建物)
  • 法20条第1項二号
    → 高さ60m以下でも、ルート2・ルート3・限界耐力計算による構造計算が必要な建築物

例えば、構造計算ルートが大臣認定ルートでも、建物規模が60m以下であれば構造一級建築士の関与は不要となります。

ただ、基本的に適合性判定が必要な計算ルートと被っているので、関与不要の建物の方が少ないと思います。

選択肢3

エキスパンションジョイントで構造的に独立していると判断できれば、それぞれを別建築物として構造規定を適用可能
審査実務でも運用される考え方。
正しい記述

選択肢4

鉄筋コンクリートのかぶり厚さや鉄骨の防錆など、いわゆる「耐久性等関係規定」は、構造計算の有無や方法にかかわらず全ての建築物に適用
正しい記述

実務のポイント

この問題は試験知識だけでなく、日々の実務判断にも直結します。

  1. 設計初期段階での確認が必須
    どの「ルート」に該当するか、構造計算適合性判定が必要か、構造設計一級の関与が必要かを、意匠打合せの段階で確認しておく。後から判定対象だと判明すると、スケジュールが大幅に遅れるリスクあり。
  2. 耐久性規定は常に適用
    かぶり厚や鉄骨防錆は「どのルートか」に関係なく全物件に適用される。
    小規模建物でも「ここは緩いはず」と勘違いしないこと。

まとめ

  • 構造計算適合性判定 → 「計算方法」で判定対象かが決まる
  • 構造設計一級建築士の関与 → 「建築物の規模・区分」で決まる

実務でも、確認申請やスケジュール調整の最初のステップは、
この建物は判定対象か?構造設計一級の関与が必要か?」を正確に押さえることから始まります。

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