
鉄骨小梁ってどうやって設計するのかな

計算内容から実務的な設計について解説するよ
構造設計事務所に入社したばかりやインターンシップで、構造計算として初めに学ぶのが二次部材だと思います。
今回は、「鉄骨小梁の設計」について、実務的なことを含めて解説していきます。
・鉄骨小梁の計算から設計がわかる
・実務的な話がわかる
そもそも小梁とは、地震力を負担する大梁の区別した、長期荷重を負担する梁を小梁といいます。
簡単に言えば、床を支える部材です。そして、その荷重を大梁に伝えるため、両端はピン支持として、大梁に取り付きます。
また、鉄骨小梁には取り付くスラブを考慮した不完全合成梁として設計する場合もあります。不完全合成梁は別記事で紹介します。
構造計算
計算のフローはこちらです。
①モデル化
②荷重の設定
③応力の算定
④部材の決定
それぞれ説明していきます。
①モデル化
部材にかかる力を把握するために、まずモデル化を行います。
小梁の支持条件は、大梁にボルト接合で取り付くため、両端をピン接合とします。
長さLはスパンの長さを採用します。
②荷重の設定
小梁にかかる荷重を設定します。
スラブの荷重は、基本的に亀の子で小梁に伝わるため、台形の荷重形となりますが、等分布荷重の方が計算が容易で、台形と比較しても差が少ないため、等分布荷重で検討します。
等分布荷重と台形荷重の比較は別記事に書いています。
③応力の算定
曲げモーメントMとせん断力Qを求めます。
等分布荷重wの場合、下記の公式で求めることができます。
$$M=wL^2/8$$
$$Q=wL/2$$
④部材の決定
部材を仮定して、応力が部材の許容応力以内であることを確認します。
許容応力は、部材の断面性能に材料の許容応力度をかけて求めることができます。
小梁の材質は、大梁にボルト接合され、溶接を特に必要しないため、SS400が使用されます。
許容曲げモーメント \(Ma=Z・fb\)
\(Z\):断面係数 \(fb\):許容曲げ応力度
許容せん断力 \(Qa=Aw・fs\)
\(Aw\):せん断断面積 \(fs\):許容せん断応力度
許容曲げ応力度fbは、座屈により低減されますが、小梁の場合は圧縮側がスラブで拘束されているため、基本的にフルfbとすることができます。
せん断断面積は、ウェブ部分の断面積になります。
③で求めた応力が④の許容応力以上であればOKです。
また、鉄骨小梁はたわみで決定することも多いため、たわみを求めます。
たわみ \(δ=5wL^4/384EI\)
\(E\):ヤング係数 \(I\):断面二次モーメント
基準法の制限値である1/250以下であればOKです。
構造細則(法規)
建築基準法により下記の制限があります。
使用上の支障に関する検討(H12建告14591号)
①\(D/L > 1/15\) \(D\):梁せい \(L\):梁の長さ
②\(δ/L > 1/250\) \(δ\):たわみ \(L\):梁の長さ ※①を満足しない場合
実務的な配慮
実務的な話として以下のことが挙げられます。
・鉄骨は裏サイズを使用する
・計算は計算ソフト(Sチャート)か社内エクセルを使用する
裏サイズについては、会社の方針によりますが、鉄骨量をなるべく落とすことが目的です。
計算書としてまとめる際には、チャートを使用することが多いと思います。また、会社によってはエクセルのフォーマットがあったりもします。
計算例

詳しく知りたい方は、こちらの書籍が参考になるかと思います。
直感で理解する!構造設計の基本
実務上の設計の注意点などが書いてあり、とても参考になります。一度に全てを理解はできませんが、仕事を進めていく上で段々と理解できてくるため、何回も読み直しています。
直感で理解する!構造力学の基本
基本的な構造力学の解説がイラスト豊富に解説してあるため、力学を忘れてしまったら復習にちょうどいい本です。
実務から見た鉄骨構造設計
鉄骨造の構造設計について一通りの設計について計算例とともに解説してあります。辞書的に使用していますが、分厚くて値段も高いです。。
現場必携 建築構造ポケットブック
おそらく構造設計書なら全員持っているであろう本です。梁の設計例などが載っています。
JSCA 版 S建築構造の設計
事務所や工場を例として、実際の構造設計から構造計算書の作成までトータルで解説してあります。二次部材の設計についても解説されています。
鉄骨小梁は力学が単純で、手計算で簡単に計算することができるので、初めのうちは手計算で感覚を掴むのも大切です。

こんな簡単に小梁の計算ができるのか

実際に建つ建物だから責任感があるよ