コンクリートの品質を決める最初の一歩が「配合計画書」です。
現場が始まり、実際に書類を見ると、専門用語ばかりでよくわからない…という人も多いのではないでしょうか。
この記事では、構造設計や現場監理に関わる人がどこをどう見ればいいかをわかりやすく整理しました。
設計図や特記仕様書との整合確認にもそのまま使えます。
1.配合計画書とは?
レディーミクストコンクリート(生コン)の製造工場が作成し、
「どんな配合で、どんな品質のコンクリートを使うのか」を示した処方箋のような書類です。
JIS A 5308に基づき、発注者や監理者の承認を得て使用します。
2.配合計画書の構成と見方
JIS A 5308の配合計画書を示します。内容を一緒に見ていきましょう。

① 現場情報
- 工事名称、所在地
- 納入予定時期、配合の適用期間
- コンクリートの打込み箇所(スラブ・梁・柱など)
構造図と整合しているか要チェック。
適用期間は「標準」「暑中」「寒中」で分かれ、気温による強度補正値が変わります。
② 配合の設計条件
設計図や構造特記仕様書で指定された条件をもと決定されます。設計図通りか確認が必要です。
| 項目 | 記載例 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 呼び方 | 普通-27-18-20-N | 「コンクリートの種類-呼び強度-スランプ-粗骨材寸法-セメント種類」の順で表記。例では「普通コンクリート」「Fc=27N/mm²」「スランプ18cm」「粗骨材20mm」「普通ポルトランドセメント」を意味する。設計図・特記仕様書と一致しているか確認。 |
| 水セメント比(W/C) | 55%(上限65%) | 耐久性・ひび割れ対策。W/Cが大きいと強度低下・中性化が進みやすくなる。 |
| 単位水量(W) | 175kg/m³(上限185kg/m³) | スランプ値との関係に注意。水が多いと施工性は上がるが、強度・耐久性は低下する。 |
| 空気量 | 4.5±1.5% | 凍害防止・耐久性確保。外部部材や寒冷地では特に重要。 |
| 塩化物含有量 | 0.30kg/m³以下 | 鉄筋腐食防止。現場では「カンタブ試験」で簡易確認可能。 |
| アルカリシリカ反応抑制対策方法 | ① AL:アルカリ総量3.0kg/m³以下 ② BB・BC・FB・FC:混合セメント使用 ③ A:安全骨材を使用 | 対策区分(AL・BB・Aなど)を明示。特記仕様書の指定と一致しているか確認。 |
| 材齢 | 28日 | 強度確認の基準材齢。供試体は20±2℃水中養生で管理。 |
③ 使用材料
各材料の種類・産地・製造所・物性値を確認します。
| 材料 | 内容 |
|---|---|
| セメント | 普通・早強・低熱など、JIS認証を確認 |
| 細骨材 | 川砂・砕砂などの種類と産地 |
| 粗骨材 | 砕石・砂利など。最大寸法20mm or 25mmが一般的 |
| 混和材 | フライアッシュ・膨張材など(容積に計上) |
| 混和剤 | AE減水剤・高性能AE減水剤など(水量に含めて考える) |
| 水 | 水道水か地下水か、水質確認を |
混和「材」と混和「剤」は紛らわしいので注意。
前者はセメントと一緒に練り込む粉体、後者は液体の薬品です。
④ 配合表(1㎥あたり)
| 材料 | 単位量(kg/m³) | チェックポイント |
|---|---|---|
| 水 | 175 | 上限185以下か |
| セメント | 320 | W/Cの根拠 |
| 細骨材 | 790 | 細骨材率40±5% |
| 粗骨材 | 1040 | 充填性とポンプ圧送性に関係 |
| 混和剤 | 1.0 | 指定通りか確認 |
| 空気量 | 4.5% | 試験値と整合しているか |
⑤ 備考欄
「骨材の質量配合割合、混和剤の使用量については断りなしに変更する場合がある。」
これは、当日の気温や材料の含水率変化などで微調整が必要な場合を想定した記載です。
変更後は、必ず購入者に報告が必要です。
3.チェックポイント一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表紙の「マル適マーク」 | 全国生コン品質管理監査会議の認定工場か確認 |
| 適用期間 | 標準/暑中/寒中のいずれかを確認 |
| 打込み箇所 | 図面指定と一致しているか |
| 呼び方 | 「普通-27-18-20-N」形式で整合を確認 |
| 塩化物含有量 | 0.3kg/m³以下(鉄筋腐食防止) |
| アルカリシリカ反応対策 | AL(アルカリ低減)/BB・BC(混合セメント)/A(安全骨材) |
| 単位水量・W/C | 上限以内(耐久性確保) |
| 混和材・混和剤 | 種類・目的・添加量を明記 |
| 備考欄 | 呼び強度=Fc+S を記載(S値の明示が大切) |
4.呼び強度と設計基準強度(Fc)の関係
配合計画書に書いてあるコンクリート強度は呼び強度であり、設計図のFcとは異なるので注意です。Fcに補正値Sを見込んだものになっています。寒いとコンクリート強度の発現が小さいため、冬に打設する場合は夏よりも大きい補正値となります。
| 名称 | 意味 |
|---|---|
| Fc | 設計図で指定する基準強度 |
| S | 構造体と供試体の差を補正する値(3~6N/mm²) |
| 呼び強度 | Fc+S(調合管理強度) |
中間検査では、「呼び強度=Fc+S」の明示がないと審査機関から指摘されるケースがあります。備考欄で明記しておくのがおすすめです。
5.見落としがちな添付資料
- 配合計画一覧表(JIS規定品か確認)
- 補正値Sの適用期間一覧
- 運搬経路図(スランプロス対策)
- 材料成績表(セメント・骨材・水・混和剤など)
- アルカリシリカ反応試験成績表
- JIS規格適合認定書
- 生コン工場概要(責任技術者名を含む)
現場でのチェック手順メモ
- 打設前:配合計画書+材料成績表を確認(試験練りは4W 強度を確認するため、打設の1ヶ月前に実施)
- 打設中:現場試験で、スランプ・空気量・コンクリート温度などを確認
- 打設後:圧縮強度試験結果と照合して記録保存
6.さいごに
配合計画書は、ただの書類ではなく、
コンクリート品質と構造安全性をつなぐ「設計と施工の接点」です。
どの現場でも確認ポイントを押さえておくことで、
ひび割れや強度不足といったトラブルを未然に防ぐことができます。
